機器収容局舎とは、比較的大規模な精密機械を屋外で使用する際に、機器を収容する「箱」を指す言葉です。用途によって大きさが変わるため、プレハブのようなサイズから、1人で持ち運べるようなサイズまであります。詳しい概要についてはコラムのページに掲載していますので、合わせてご参照ください。
ここでは、数ある機器収容局舎の中でも特に大規模なタイプが多く使用される交通関係用の局舎に焦点を当てて詳しくご紹介します。
交通大国である日本は、鉄道を始め、公共交通機関が非常に発達しています。鉄道や航空機、船舶による移動は、今では日常生活に不可欠なものとなっています。なお、こうした交通機関の高い利便性と安全性を維持するためには、多くの機械の働きが必要となります。同時に、大小様々な機器収容局舎も必要となっています。身近なものとしては、鉄道関係の機器収容局舎などが例として挙げられます。
安全な空の旅を守るため、多くの機器が航空機の着陸から離陸までを支援しています。
空路においては、計器着陸装置やVOR、DMEの無線局などに機器収容局舎が用いられています。VORとは、放射状に広がる方位信号を発するための無線局のことで、VORからの信号をキャッチすることで飛行中の航空機は自身がその無線局から見てどの方角にいるのかを知ることができます。DMEはVORと併設される機器で、航空機と無線局の距離を測定することができます。VORによって方角を、そしてDMEによって距離を知ることで、パイロットは周りに雲しかない空の上でも航空機の位置を把握することが可能となります。
このように、VORやDMEは航空機の運行に必要不可欠な装置であるため、機器収容局舎によって保護される必要があります。こうした計器着陸装置やVOR、DMEの無線局を収容する局舎は、全国に約100局設置されています。
空路における機器収容局舎は、他の局舎とはカラーリングの点で異なります。通常、機器収容局舎は白やグレー、クリーム色などの地味な色をしており、目立たないように配慮されています。また、景観に配慮して特殊なデザインをすることもあり、いずれも悪目立ちしないための対策が施されています。この点、空路における局舎は赤と白のストライプなどの目立つカラーリングとなっています。これは、空港の広さや安全面から、発見されやすいものであることが望ましいためです。
船舶の航行においても、機器収容局舎は大きな役割を果たします。
海も空と同様、陸から離れてしまうと自身の位置を確認することができないため、無線局による位置の把握が必要となります。
また、海上においては交通の他に、観測のためにも機器収容局舎が利用されます。波浪や津波の観測など、海上の様々な状況を把握するための海洋レーダー機器は、港や海岸付近、あるいは海上に設置されています。
航路用、観測用、あるいは空路用などでも海岸付近に設置される場合は、内陸とは違って潮風への対策が必要となります。潮風による腐食(錆び)を防ぐためには、フッ素コーティングが有効です。フッ素コーティングとは、表面にフッ素樹脂を加工するもので、耐熱性や耐寒性に優れ、引っかき傷からも守ることができ、何より圧倒的な低摩擦性によって汚れを弾く性質があります。身近な例として、フライパンが挙げられます。フッ素加工がなされたフライパンは焦げや汚れが付きにくく、一般家庭で広く普及しています。フッ素加工によって水や汚れが弾かれるため、塩害からも機器収容局舎を守ることができます。
道路は一見すると、信号機以外の機器は必要ないとも考えられがちですが、ここでも機器収容局舎は大いに活用されています。
最も代表的なものが、スマートICの管理システムです。高速道路の入り口に設置されているETCは停車せずとも高速道路に進入できるシステムであり、機械による制御が行われています。こうした機械は多くの場合に野外に設置されているため、機器収容局舎が必要となります。
機器収容局舎の多くは施設のすぐ横や道路の脇に設置されていますが、高架の下などの目立たない位置に設置されている場合もあります。
日本が交通大国と呼ばれる所以の一つとして、鉄道が挙げられます。世界一の乗降客数を誇る新宿駅を始め、首都圏に縦横無尽に張り巡らされた鉄道網は初めて訪れた人に戸惑いを与えるほどです。鉄道分野での技術水準も非常に高く、日本国内をかつて走っていた車両が海外で使用されるケースも少なくありません。
こうした鉄道を支えるためにも、機器収容局舎は必要不可欠となっています。列車間、あるいは列車と管制室とで連絡を取り合うための無線通信用局舎や信号通信用の局舎、さらにはSuicaの監視盤、融雪装置の機械制御室などに局舎が用いられています。また、現在開発が進められているリニアモーターカーにはより高度な安全性と乗り心地の確保が必要とされており、様々な機器のサポートが必要であることから機器収容局舎もそれに合わせて必要数が増加しています。
また、鉄道の運行には大量の電力が必要なことから、各所に電源用の機器を保護するための収容局舎も設置されています。なお、蓄電池を一緒に収容する場合もあれば、無線局舎などの横に蓄電池用の局舎がもうひとつ用意されている場合もあります。